キビタス株式会社 代表取締役CEO 兼 共同創業者 森下将宏  氏
『スタートアップのオープンイノベーション・事業開発を』

先端技術領域における事業開発を担当し、スタートアップの立ち上げからスケールまでを経験する森下氏。スタートアップとしての課題や、大企業とシナジーを生む方法、今後のFintech・AI領域におけるビジネスチャンスについて伺いました。    

 

―これまでの経歴をお聞かせください。

主にエンタープライズ向けの情報セキュリティサービスを扱うスタートアップで役員として事業開発やマーケティングを行っていました。エディンバラ大学大学院でデータ活用やデザイン領域を学んでいましたが、そこで得た知見を実際の事業で取り組みたいと思い、当時立ち上げ直後の前職スタートアップに参画致しました。

 

SaaSモデルの情報セキュリティサービスで、具体的には、ログイン・会員登録などのアカウント情報に関して、アクセス元のブラウザ・IPアドレスなど数百のパラメーターを解析し、リアルタイムでセキュリティ判定をするという内容です。その判定の仕組みには、機械学習をはじめとするさまざまな技術が使われています。

 

―事業開発の上で、スタートアップならではの課題はありますか?

スタートアップはお金がないので、効率的に開発することが肝要です。プロダクト開発の際、スクラッチでゼロから開発するということはほとんどなく、さまざまなツールを組み合わせながら開発を進めていきます。どのクラウドを使うか、どの決済サービスを使うかという選択には、技術的な観点はもちろん、サービス提供元企業とのパートナー戦略にも関わってくるため、ビジネスサイドとの調整も重要です。たとえばクラウドであれば、クラウドベンダーより顧客をご紹介していただけたり、導入事例紹介としてPRしていただけたりと、戦略的なパートナーシップが検討できます。

 

さまざまなツールを積極的に活用することで時間を短縮できるだけでなく、製品開発・ビジネス・プロセスを内製化でき、データ管理もしやすくなります。ツールを開発・提供する企業からカスタマーサクセスをはじめさまざまな学びの機会もあります。なので、特にスタートアップは積極的にツールを使うべきだと思います。

 

人材という観点でいうと、フェーズごとに求められるスキルが変化するという点は課題です。主なフェーズとしては、「課題発見」、「MVP開発」、「プロダクトマーケットフィット(PMF)」、「スケール」の各段階があると思いますが、立ち上げからグロースするところまでチームを維持するなら、フェーズの変化に柔軟に対応できる人を選ぶべきです。また、当然ですが、人を採用すると人間関係が発生することも考慮しなければなりません。

 

ただ、最近ではアウトソースのサービスも整ってきたので、必要な機能を切り出して、スポットで外注するというケースも多いです。

―デジタルを推進する上で、人材のディレクションに課題はありますか?

大企業がスタートアップと協業してオープンイノベーション事業を推進することが最近増えてきましたが、大企業側にスタートアップとのプロジェクトをディレクションできる人材が多くなく、エージェント等にその部分を外注しているケースも見受けられます。オープンイノベーションでは、大企業側は何をするべきかがはっきりしていないケースもあるので、スタートアップ側が協業のイメージを具体的に提示して積極的にディレクションできると進みやすいです。

 

オープンイノベーションが成功するケースは、大企業側に理解がある場合が多いです。スタートアップは柔軟な動きができて試行錯誤しやすいという強みがある反面、予算と時間が限られており本業でないことに時間を取られすぎると会社存続すら危ぶまれる、という特有のリスクを負っています。そこを理解し、実ビジネスにつなげる意思をもって協業できると、お互いにメリットがある形で推進できます。

 

―今後取り組みたいテーマを教えてください。

これまでは、先ほどのオープンイノベーションにおいて大企業・スタートアップの両方における支援を主に取り組んでいましたが、今後は法人設立し、新製品開発に取り組みたいです。着目している分野としては、AI時代における新しいソフトウェア開発モデルです。従来の「作る」ことに重点を置くソフトウェア開発から、AI活用が進んだことで、作ったモデルに対して、いかに学習させ、課題解決に有用なAI開発をするかがより重視されるようになってきました。つまり、「課題発見」、「モデル開発」、「データによる学習」という、AI開発の新たなバリューチェーンが生まれていて、そもそもAIを活用するに値する課題の定義や、作ったモデルに対して、必要なデータの選定や収集の部分に、ニーズを見ています。

 

ブロックチェーン領域において、個人的に興味を持っているのは非中央集権的ガバナンス(Decentralized Autonomous Organization: DAO)の分野です。これは、組織運営の仕組みがすべて民主的に決められたルールをもとに実行されるという考え方です。例えば仮想通貨の領域でいえば、オープンソースのコードによって定義されたルールをもとに貨幣が発行され、日本銀行のような中央集権的組織のルールなしでも貨幣が流通するという仕組みですが、組織に当てはめると、組織の中央集権であるCEOや、ミドルマネジメント層が必要なくなるので、組織の意思決定の仕組みそのものが大きく変わります。

―スタートアップにおいて求められるデジタル人材とは?

やはり自ら情報をとれる人だと思います。スタートアップの情報源についていうと、ベストプラクティスはほとんどシリコンバレー発。ただ、情報の多くはオンラインで入手できます。有力な投資家情報など、現地に行かなければ手に入らない情報もありますが、特にスタートアップは情報を共有する文化があるため、多くはブログや著書、海外の論文からとることができます。ただ、これらも翻訳されていないものがほとんどなので、一次情報をとるために、やはり英語は重要ですね。

 

【プロフィール】

森下将宏氏

東京・イスラエル・シンガポールにてスタートアップ数社のマーケティング・事業開発を経験の後、2016年より株式会社カウリスに1人目の社員として参画し執行役員COOに就任。現在はフリーランスとして独立し、主にFinTech・AI領域におけるスタートアップならびにオープンイノベーションの支援を行う。京都大学経済学部卒業(経済&経営)、エディンバラ大学デザインスクール修士(Design Informatics)。

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